書籍情報|本日は、お日柄もよく
「本日は、お日柄もよく」のあらすじ(楽天ブックス)
「本日は、お日柄もよく」のキーワード
スピーチライター
スピーチ
政権交代
バラク・オバマ
党首討論
公職選挙法
感想/書評|言葉の力
主人公は30歳手前のOL
恋心を抱いていた幼なじみの結婚式から物語は始まる。
そこで出会った伝説のスピーチライターのスピーチに感銘を受けて、弟子入り。
幼なじみは、政権野党のNo.2の息子だが、普通に広告代理店に勤めていた。
しかし、政権交代の風雲と野党党首の説得で、親父の選挙区から立候補することを決意する。このとき主人公は会社を辞めて、専属スピーチライターとして彼を支えていく。
物語の中では、結婚式のスピーチ、葬式での弔辞、党首討論、など様々なスピーチの場面が出てくる。
最も印象に残ったのは、冒頭の伝説のスピーチライターのスピーチ。時点で、幼なじみの集会の挨拶も良かった。
スピーチには、政治用語などの難解な単語が含まれているが、言い回しが工夫されていて、すっと心の中に入ってきた。言葉の力を再認識した。
作中で登場したスピーチ10則のうち、印象に残っているのは下記4点。
・聴衆が静かになるまで待つ
・最後まで泣かない
・語尾を伸ばさない
・静かに始めて、笑いを取って、涙で終わる。
ビジネスのプレゼンや、普段の会話でも役立ちそうな法則だと思う。
スピーチが、ゲシュタルト崩壊してきたのでここまで。
感想/書評(2)|ストーリーと知識と信念
原田マハ氏の小説をはじめて読んだ。
スピーチライターという馴染みのあまりない職業にスポットライトを当てた作品。
スピーチライターという職業は、まだ日本ではあまり馴染みがないが、アメリカでは既に重要な役割を担っているらしい。
まず、ストーリーに心を打たれた。スピーチライターが登場する点を除けば、それほど目新しいストーリではないような気もする。しかし、知らず知らずのうちに、登場人物に感情移入してしまう。電車やバスなど、公共の場所で読んでも、気を抜いたら泣いてしまうかもしれない。
次に、随所で提供される知識が好奇心を満たしてくれた。スピーチライターという職業が題材にされている関係で、本作品には政治に関するワードが頻出する。それらのワードについて、ストーリーの妨げにならない形で、分かりやすく説明してくれる。
最後に、原田マハ氏が本作品の題材にスピーチライターや政権交代を選んだ意図が気になった。
政治的なテーマを取り扱うことには、一定の政治的立場に立つものと(しばしば勝手に)評価されて反対の立場に強い批判を受けるリスクがある。
原田マハ氏は何かしらの政治的信念に基づいてあえてリスクをとったのだろうか。
この点は、同氏の別作品も読んでいくことで分かるのかもしれない。
なお、本作品には神田昌典氏による「成功者の告白」に似たものを感じた。ストーリーを展開しつつ、一定の知識を読者に提供しようとする点が似ているのかもしれない。