書籍情報|欲望の見つけ方
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模倣理論
再帰性の原則
ランボルギーニ対フェラーリ
スケープゴート・メカニズム
罪の発明
モンテッソーリ・メソッド
感想/書評|模倣理論の入門書
X(旧「Twitter」)でオススメされていたので、読んでみました。
本の帯に「本書はルネ・ジラールについて書かれた最もわかりやすい入門書である」というピーター・ティールからの推薦文が書かれていて、その点でも興味を持っていました。
ルネ・ジラールと模倣理論
本書のテーマは「模倣理論」です。
模倣理論は、「社会科学の新しいダーウィン」と呼ばれた学者、ルネ・ジラールが提唱した理論です。ルネ・ジラールの教え子には、ピーター・ティールもいます。
本書には、模倣理論について、次の記載があります。
ジラールは、私たちが欲しがるもののほとんどは、模倣によるものであって、内在するものではないとした。人間はーー真似ることを通してーーほかの人が欲しがるものと同じものを欲しがることを学ぶ。
この記載だけだと、なんとなく、当然のことを言っているだけにもみえます。
セレブの国と一年生の国
個人的に面白いと思ったのは「セレブの国」と「一年生の国」という考え方です。
模倣理論は、人々の争いを説明することもできます。
人が他人の真似を続け、同じものを追い求めるようになると、争いが生じかねません。
この問題は、特に似たような境遇に置かれた人の間で顕在化しやすい傾向にあります。
自分とかけ離れた状況に置かれた人を模倣する分には、あまり大きな問題は生じません。
これに対し、自分と似た境遇に置かれた人を模倣していると、嫉妬の力も強く働く結果、争いが生じる可能性が高まります。
ピーター・ティールが『ゼロ・トゥ・ワンーー君はゼロから何を生み出せるか』で指摘したように、カール・マルクスとウィリアム・シェイクスピアは、人が闘う理由についてまったく異なる見解を持っていた。マルクスは諍いは人がそれぞれ違うから起きると考えていた。(省略)シェイクスピアの見方はまったく逆のようだ。
模倣理論を踏まえた対応
本書は、次のような行動を促しているように思われます。
個人
- 自分の欲望が誰かの真似ではないかを常に問うようにする。
- 何を欲すべきかを自己に問うようにする。
- 真実を追求するように心がける。
組織運営
- 内部で争いが生じる可能性がある場合、欲望の対象を外に向ける。
- 組織内がフラットになればなるほど、内部での争いが先鋭化する可能性がある。
最後に
表紙だけ見ると、あまり新しいことを言っていないようにも感じられます。しかし、実際には、少なからず新たな気づきを得られる記載も含まれています。
「人を模倣しているかもしれないが、それを逃れる方法が思いつかない」と考えている方にもオススメです。