書籍情報|教育は遺伝に勝てるか?
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行動遺伝学
感想/書評|遺伝は遺伝しないとは?
行動遺伝学を専門とする著者が、遺伝が行動に及ぼす影響を説明する本です。
第1章を読むだけでも、書籍代分の価値が十分にあります。
「遺伝」と聞くと、「両親の性格や能力を受け継ぐこと」と連想してしまいます。
しかし、本書の第1章「遺伝は遺伝せず」では、そのような考えが誤りであることが示されています。
多くの能力や性格は、一つの遺伝子だけではなく、多数の遺伝子の影響を受けます。そのため、どのような能力や性格を備えているかは、血液型のように単純には決まらず、かなりランダムに決まることになります。
つまり平凡な両親から、天才やギフテッド児が生まれる可能性も、平均よりずいぶん劣る子どもが生まれる可能性もあり、同じ親から生まれたきょうだいにもかかわらず、全然似ていないことがあるのは、不思議でもなんでもなく、遺伝子分配の確率的なランダムネスから生ずるありきたりの現象なのです。
遺伝の仕組みを考えれば当たり前のことなのですが、意外に忘れがちな話かもしれません。
さらに本書は、一卵性のふたごと二卵性のふたごを比較した研究データをもとに、遺伝の影響と共有環境の影響(家庭の影響など)を分析しています。
この研究方法自体面白いのですが、その結果も非常に興味深いものです。
たとえば、いわゆる外向性や勤勉性などのパーソナリティは遺伝の影響を強く受けるそうです(繰り返しになりますが、単に親に似るという趣旨ではありません)。
このほかにも、多くの結果がデータと共に記載されているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
個人的には、本書の第5章で紹介されている都会と田舎の遺伝の影響力を比較した研究も非常に興味深いものに感じました。
たとえば、飲酒の動向に遺伝が及ぼす影響は、都会が田舎よりも大きいようです。それはつまり、田舎では、都会よりも、遺伝の影響が非遺伝要因(周囲の環境など)によって制約されているということを意味します。その意味で、都会は田舎よりも自由と評価できるのかもしれません。
本書第5章で紹介されている研究では、これ以外にも興味深い結果が載せられていますので、一読をおすすめします!