書籍情報|楽園のカンヴァス
「楽園のカンヴァス」のあらすじ(KIROKU内)
アンリ・ルソーの幻の作品「夢を見た」。その真贋判定を任されることになった2人の若きキュレーター、早川織江とティム・ブラウン。2人に用意されたのは作者不明の一冊の本だった。作品をめぐる複数の陰謀の中で、アンリ・ルソーを愛する2人は、どういった結論を出すのか…
※ このあらすじは、当サイトに投稿された感想/書評の一つです。
「楽園のカンヴァス」のあらすじ(楽天ブックス)
「楽園のカンヴァス」のキーワード
大原美術館
キュレーター
監視員
コレクター
アンリ・ルソー
ヤドヴィガ
MoMA
ピカソ
アンデパンダン
野獣派
ブルー・ピカソ
感想/書評|美術ミステリー小説との出会い
アンリ・ルソーが1910年に描いた「夢」を題材にした美術ミステリー小説。
はじめて美術ミステリーと呼ばれるジャンルの小説を読んだ。
これまで美術にまったく興味がなかったが…
めちゃくちゃ面白かった。
原田マハの近代美術に対する知識量
まず、何よりも、著者である原田マハの近代美術に対する知識量が凄まじい。
恥ずかしながら、この本を読むまで、アンリ・ルソーのことは1ミリも知らなかった。
しかし、著者が作品中にさりげなく必要知識を散りばめているため、何の苦なく最後まで読むことができた。
それどころか、アンリ・ルソーだけでなく、パブロ・ピカソやアンリ・マティスの作品や生涯のことをもっと調べたいと考えるに至った。
斬新な場面構成の仕掛け
次に、場面構成の発想が斬新すぎる。
この本では、大きく分けて、3つの場面が用意されている。
1つ目が、岡山県倉敷市の大原美術館。
2つ目が、スイスのバーゼル市。
3つ目が、ルソーの生きた時代、1905年頃のフランス。
場面ごとに時代も異なるのだが、その切替えの仕組みが絶妙だと感じた。
特に2つ目の場面から3つ目の場面に切り替える際に利用されている一冊の本。
「一冊の本を毎日一章ずつ読み進めることで美術品の真贋判定をおこなう。」という特殊な仕掛けの導入により、本を読んでいる場面から本の中の場面へと綺麗な切替えが実現されている。
記録キーワードの整理
最後に、この本を読みながら興味を持って調べたキーワードを幾つか整理しておく。
キュレーター
「学芸員」は、1951年の博物館法制定とともにcuratorの翻訳として生まれた語。(省略)他方「キュレーター」は上記の通り本来「学芸員」の原語だが双方の実状は異なり、職能を専門分化する欧米のミュージアムでは企画監督を司る者をcuratorと呼ぶ。
アートスケープ/artscape
本書の中での「キュレーター」は「学芸員」とは大きく異なっている印象だった。
ちなみに、美術手帖の記事「いまこそキュレーターの給与を考えよう。衝撃のデータがウェブ上で公開」によれば、本書でも登場するニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーターの年収は1750万円らしい。
アンリ・ルソー
アンリ・ルソーは1844年フランス・ラヴァル生まれ。正式な美術教育を受けていない日曜画家で、素朴派を代表するひとり。
当初は、遠近感のない稚拙な作品として理解されなかったが、晩年には素朴派の名づけ親である批評家のヴィルヘルム・ウーデをはじめとして注目されるようになり、また、1908年にはパブロ・ピカソがルソーをたたえるために、アトリエ「洗濯船」で仲間を集めて一夜の宴を開いた。
美術手帖「アンリ・ルソー」
本書の題材である「夢」の作者であるアンリ・ルソー。
次のような作品を描いている。
野獣派(フォービズム)
フォービズムは20世紀のはじめにフランスで起こった絵画運動で、野獣派や野獣主義、フォーブとも言います。
This Is Media
後期印象派を代表する画家、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌらの作品に刺激された当時の若い画家たちが、原色を主体とする激しい色彩と大胆な筆づかいで、荒々しくも力強い作品を描きました。
アンリ・マティスが代表的画家であるらしい。
色彩の魔術師と呼ばれたアンリ・マティスは、次のような絵を書いている。
ブルー・ピカソ
ピカソが19歳の時に、親友のカスマヘスが自殺したことにショックを受け、そのことが彼の作品に表現されていきます。
【教養を深める】ピカソの『青の時代』解説
「青の時代」と言われる期間は1901~1904年という短い期間でしたが、多くの人に影響を与えました。主に青色を主体とした作品を描き、盲人や娼婦、乞食などの社会の底辺にいる弱者を題材とする作品を描き続けました。
彼の中に渦巻いている負の感情を絵画に表現し、何か新しい感情の表現方法を模索していたのでしょうか。ピカソの青の時代の作品からは「死」「苦悩」「絶望」「貧困」「悲惨さ」「社会から見捨てられた人々」などをメランコリックに表現されているように思えます。
今では「青の時代」という言葉は、孤独で不安な青春時代を表す一般名詞のようになっています。
本書を読むまで全く知らなかったが、ピカソは、その生涯において、何度も作風を変えているらしい。
そして、20代前半頃の作品を「青の時代」または「ブルー・ピカソ」と呼ぶらしい。
この時代の作品は、当初はあまり売れなかったものの、現在では評価が高いとのこと。
「X」における感想
楽園のカンヴァス
— Yusuke (@yusuke_book) August 13, 2023
久しぶりにめっちゃおもしろい小説読んだなぁと思う。ルソーの名作「夢」に酷似した作品「夢をみた」をめぐる謎と登場人物たちのドラマ。過去も今もアートに生きる人々の情熱と愛が胸に響く。読後感も心地よく、伏線回収も抜群だった。#読了 pic.twitter.com/pwqxl0Jw8n
#読了 楽園のカンヴァス 原田マハ著
— shinkaihiroi (@shinkai_hiroi) August 4, 2023
蒼穹の昴シリーズが一段落したので、久し振りにマハさんの本。ルソーの絵、今まで気にしたことなかったけど、カラフルな絵柄がお話を明るいものにさせたのかな。後半取って付けたような設定に感じたところもあったけど最後は納得のいく展開で面白かった。
楽園のカンヴァス読了。あまりにも美しい旅から戻ってきました。
— 𓃰アヴィ𓅰 (@Abysss01349134) August 8, 2023
ルソーの夢✨夢という絵✨この本を読む前と読んだ後では絵の見え方が全く違う。たくさんの人の情熱がとことん込められた夢。
夢を見せてもられて、夢に魅せられて✨
こんな素敵な本に出会えて嬉しい🥰 pic.twitter.com/2Qe2weN96W
原田マハの楽園のカンヴァス読み終わった。車内と外の寒暖差のせいか感動のせいか鳥肌…。
— ask (@choco___oishii) August 12, 2023
伊坂幸太郎のAXといい、私が名作を読み終わるのはなぜか移動中。