書籍情報|君主論
「君主論」のあらすじ(KIROKU内)
君主はどのように振る舞うべきか。マキャベリは、ローマ史の研究結果や自己の半生を振り返り、君主のあるべき姿を説く…
※ このあらすじは、当サイトに投稿された感想/書評の一つです。
「君主論」のあらすじ(楽天ブックス)
「君主論」のキーワード
政体
チェーザレ・ボルジア
イタリア
ローマ史
自国軍
援軍
傭兵
感想/書評|人間の本質と君主政
君主政について説いた本。
意外にサクッと読めた。
論理的思考の現れ
すべての政体は、すなわち昔から今まで人びとの上に政治権力を行使してきたすべての支配権は、昔も今も共和政かさもなければ君主政である。君主政体は、その支配者の血筋が長いあいだ君主として続いてきた世襲の政体か、さもなければ新興の政体である。新興の君主政体は、フランチェスコ・スフォルツァの手に帰したミラーノのごとく、全面的に新しいものか、さもなければスペイン王の手に落ちたナーポリ王国のごとく、それを獲得した君主の世襲政体に付加された増築箇所のようなものである。こうして新たに獲得した支配地は、それまで君主の下で暮らすことに慣らされてきたか、さもなければ自由であることに慣れてきたかである。また獲得したさいには、他者の軍備によったかさもなければ自己の軍備によったかであり、運命のためかさもなければ力量のためである。
最初にマキャベリは、君主政体をカテゴライズする。この書き始めを見ると、本書が彼の論理的思考に基づくものと分かる。
本書を読み進めると、これは確信に変わる。
本書は16世紀初頭に書かれたらしい。
時代背景も異なるため、読み進めるのは困難と思っていた。
が、サクッと読めた。
その理由は、この論理性だと思う。
全体を通じて、本書の主張は論理的に展開されている。
新しい主張の直後には必ず理由が適切に記載されている。そんな印象を受けた。
…訳者の腕が良いからかもしれない。
主張の普遍性
何も知らずに本書の主張骨子を読んだら、16世紀の書籍だとは思わないのでは?
そんな印象を抱くほど、本書の主張には普遍性を感じる。
なぜなら、本書が「人間とはどういう生き物か。」を検討しているから。
君主は、人間の本質を理解しなくてはならない。
マキャベリは、そのように考えているようだ。
自分たちの家が焼かれ、私財が破壊されたのも、君主を守るためであった以上、彼が自分たちに恩義を感じているような気がしてくるから。そして人間は本性においては、施された恩恵と同様に、施した恩恵によっても、義務を感じあうものなのである。
…とても説得的…
次の記述も有名かも。
ここで注意しておくべきは、人民は優しく手なずけるか、さもなくば抹殺してしまうかだ。なぜならば、軽く傷つけられれば復讐してくるが、重ければそれができないから。したがって、そういう誰かを傷つけるときには、思いきって復讐の恐れがないようにしなければならない。
本書を「君主政に関する書籍」と捉えてしまうと、現代に活かせる学びは少ないかも。「人の本性に関する論文」と考えて読むのが良いかもしれない。
最後に
意外に読み易かった。が、マキャベリが主張の根拠に引用するローマ史やイタリアの諸都市の位置関係がわかない。この辺を学習した上で再読したい。
また、今度はマキャベリが共和制をテーマに書いたローマ史論も読んでみたい。
「X」における感想
『君主論 (岩波文庫)』#読了
— ks (@ks_hobby_) August 19, 2022
政体を維持すべく君主として軍備や権力者、民衆とどう相対すべきかを論ずる本、なんだけど基本「寝首をかかれないように気を付けろ」的な内容で少し拍子抜け。気前良いのとケチンボとどっちが良いか、とか。
マキャヴェリズムの語源とあってもっと苛烈なもの想像してた。 pic.twitter.com/UyQIXavqYt
指導者もなく、秩序もなく、打ちのめされ、剝ぎとられ、引き裂かれ、踏みにじられて、ありとあらゆる破滅に耐えねばならなかったのである。
— 岩田 敏秀 (@toiwata) July 2, 2023
—『君主論 (岩波文庫)』マキアヴェッリ, 河島 英昭著https://t.co/T7yJuSCcsH