映画情報|MINAMATA-ミナマタ-

監督 | アンドリュー・レビータス |
上映日 | 2021年09月23日 |
上映時間 | 115分 |
制作国 | アメリカ |
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水俣病
MINAMATA
ユージン・スミス
感想/評価|公害の原因と、その恐ろしさ
水俣病のことを世界に知らしめた写真家ユージン・スミスを題材とする作品。
ユージン・スミス役は、ジョニー・デップ。
史実に基づくが…
本作品は、実在の人物「ユージン・スミス」に関する作品であり、史実に基づく。
ただ、すべてが史実通りかというと、そうでもないみたい。どこまでが史実で、どこからがフィクションかが明確でない。その点は注意する必要がある。
写真の存在と評価
とはいえ、ユージン・スミスが撮影した写真「入浴する智子と母」などの水俣病に関する写真群が世界的に有名であることは真実。
彼が水俣病に関する写真撮影を開始するのは1970年頃。
1959年には既に「世界の十大写真家」に選ばれていた彼によって、水俣病の存在が世界に伝わったのは真実だろう。
水俣病の患者の救済にとって、大きな力になったことだろう。
水俣病とは
本作品を観て、あらためて水俣病に興味を持ったので、少し調べた。
昭和31年(1956年)4月21日に原因不明の激しい脳症状を訴える5才の女児が新日本窒素肥料(株)(注:現JNC(株))水俣工場附属病院を受診し、同月23日に入院しました。同年5月1日同工場附属病院長が水俣保健所に脳症状を呈する患者の発生を報告し、この日が「水俣病公式確認の日」とされています。
水俣病は、メチル水銀により中枢神経を中心とする神経系が障がいを受ける中毒性疾患です。腎臓等が障がいを受ける無機水銀中毒とは異なった病像を示し、神経系以外に障がいが生じることは確認されていないことが定説となっています。
臨床的には多様な症候が生じ、主要な症候(※)は、四肢末端の感覚障がい、小脳性運動失調、両側性求心性視野狭窄、中枢性眼球運動障がい、中枢性聴力障がい、中枢性の平衡機能障がい等です。また、母親が妊娠中にメチル水銀の曝露を受けたことにより、脳性小児マヒに似た症状をもって生まれる胎児性の水俣病もあります。
熊本県「水俣病の発生・症候」
新日本窒素肥料株式会社がアセトアルデヒドの製造工程で排出した排水には、メチル水銀が含まれていた。
これを体内に取り込んだ魚介類を口にすることにより、水俣病を発症することになった。
胎児にも影響が出る点が、水俣病の問題が深刻化・長期化している一つの原因と言えそう。
伝染病という誤解
当初は「伝染病ではないか」と言われていたみたい。
たしかに、同じ地域から複数の患者が出てくると、そう感じてしまうのもやむを得ないか。
問題なのは、伝染病でないことが判明した後も、伝染病と誤解する人が少なくなかったこと。
土地の名前が入った水俣病という名称も良くなかった。
水俣病患者というだけで差別を受けることも多かったらしい。
世界に水俣病の実態を伝えた米国の写真家ユージン・スミス(1918~78)を俳優ジョニー・デップが演じる映画「MINAMATA―ミナマタ―」が2020年2月、ベルリン国際映画祭で初公開された直後。水俣のある店のカウンターで客の一人がつぶやいた。「いまさら当時の水俣を描かれても……蒸し返さんでほしい」
苦い経験があるからだ。修学旅行へ行った関西の土産物店で、どこから来たのか問われ、勇気を振り絞った。「水俣です」。すると露骨に嫌な顔をされた。外からは「うつる」といった間違った知識や中傷にさらされ、なおさら歴史的受難を直視できなくなった。地元だからこそ、本当に見ようとすれば、苦しいから。
MINAMATA ユージン・スミスの伝言
勇気の欠如
水俣病公式確認の日は1956年5月1日。
しかし、その後1968年5月まで、水銀を用いたアセトアルデヒド製造は継続。
新日本窒素肥料株式会社は、長期間にわたり、原因が自社にあることを認めなかった。
勇気が欠如していた。その一言な気がする。
一方、公式発見から3年後の1959(昭和34)年には、チッソの猫実験において有名な「猫400号実験」がスタートします。これは、工場廃液を猫の食事に直接かけて与え続けたもので、400号と名付けられた猫が開始3カ月ほどで痙攣発作などを起こしました。
当時、実験を行ったのはチッソの附属病院の病院長であり、チッソに報告します。しかし、チッソは結果を公表しないこととし、実験の継続を条件に医師を説得しました。
この事実は後に明るみに出て、裁判でも「水俣病隠し」として糾弾されました。再三にわたり発生源であることを認めない姿勢が、被害の拡大を引き起こしたのです。
國學院大学「水俣病の被害拡大はなぜ止められなかったのか」
「自分達の排水が原因でない可能性」というのは、信じようと思えば、いくらでも信じられるだろう。
現実の世界には100%の立証なんてものは存在しないから。
だからこそ、自分達の排水が原因であることを認めるのには勇気がいる。その勇気が欠如していた。
……自分が同じ立場だったら、勇気を発揮できただろうか。
日本での放映と予告
この映画は、日本でも知名度の高いジョニー・デップが主演であり、日本の代表的な公害「水俣病」をテーマにしている。
めちゃくちゃ話題になりそう。
だが、2021年の公開当時、そこまで日本で話題になった記憶がない。
単純に、あまりテレビを見ていなかったからかもしれない。
この作品は、全体的に日本政府の対応をも批判している。
そのことが原因で話題にならなかった。
…という訳ではないと信じたい。