書籍情報|0ベース思考
「0ベース思考」のあらすじ(楽天ブックス)
「0ベース思考」のキーワード
糞便微生物移植法
コブラ効果
金銭的枠組み
敵対的枠組み
友好的枠組み
権威主義的枠組み
m&m's条項
分離均衡
ナッジ
倫理的逸脱大事典
死前検証
感想/書評|物語のすゝめ
「ヤバい経済学」と「超ヤバい経済学」の著者による本です。
…面白くないはずがない。
実は3年ぶりぐらいに読み直したので、読んだのは2回目だったのですが、やはり面白かったです。
概要
「ゼロベースで考える」という言葉は、日本でも良く聞くようになった気がします。
何かを考えるとき、人は知らない間に自己の生まれ育った環境や固定観念に影響を受けてしまう傾向にあります。
本書は「如何にして固定観念から逃れるか」を教えてくれるとともに、「(固定観念に囚われている可能性もある)人を如何に説得するか」に関するアドバイスをくれます。
豊富な具体例と物語
「物語」によって他人に気付きを与えることを勧めつつ、本書自体も「物語」を駆使して読者に気付きを与えようとしています。
そのため、本書では、ヤバい経済学と同様に、いろんな具体例が挙げられています。
バンドのツアーに関する契約書には、53ページもの付帯条項があって、(省略)この膨大なヴァン・ヘイレン付帯条項の40ページめに「スナック」に関するセクションがあった。ここには、ポテトチップス、ナッツ、プレッツェル、そして「m&m’s(警告:絶対に茶色のものがあってはならない)」とあった。
個人的に気になったのは、このm&m’s条項の話です。
ロックバンドが自己のツアーを行うにあたり、プロモーターと交わした契約書に盛り込んだこの「m&m’s条項」は、一体どういう意図で設定されたのでしょうか。
本書で「分離均衡」と関連して触れられた「物語」の一つですが、この「m&m’s条項」の効果は非常に面白いと思いました。
気になった方は、ぜひ本書を手に取ってみてください!
※ 付帯条項には、技術や安全面の細かい指示が記載されていました。
ゼロベースで考える必要性
ある問題と向き合い、問題の解決策を考えようとする時、人は知らず知らずのうちに固定観念に影響を受けてしまいます。そして、このような固定観念の影響から逃れるのは、非常に困難なように思います。
本書には、次のような記載があります。
このあいだも、二人の心理学者が学術誌にこんなことを書いていた。「人はほかの誰と過ごすよりも自分と過ごす時間のほうが長いのに、自分のスキルや能力のことを驚くほどよくわかっていない」。よく知られている現象として、あなたの運転はうまいですかと聞かれると、大部分の人が人並み以上と答えるという。
人は思っている以上に固定観念の影響を受けているため、意識的に行動しないと、そこから逃れることはできません。
本書を読み、次のような思考方法が大事であるように感じました。
- 思考に道徳を持ち込まないこと
- 過去事例の限界値を意識的に無視すること
- 数値やデータを重視すること
特に1つ目は忘れがちな視点かもしれません。
何かを解決する時に「理想」に頼ってしまうことは、少なくないように思います。
「こうやったら世界は善くなるから、こうやるのが正解だ」
こんな風に考えてしまうことも少なくありません。しかし、良く考えると、多くの場面においては、このような発想に正当な根拠はない気がします。
また、他人の倫理観に過度に期待してしまうことも少なくありません。本書には、次の記載もあります。
チャルディーニは、この訴えには本当に効果があるんだろうかと疑い、研究仲間と実験を行った。森林内の小道に化石木(珪化木)の小さなかけらをばらまいて、誰でも簡単に拾えるようにした。そして一部の小道には「盗らないでください」という看板を立て、残りの小道には看板を立てなかった。結果? 看板ありの道で盗まれたかけらは、看板なしの道の3倍以上だった。
理想や道徳が重要なのは間違いないと思いますが、問題解決にあたっては、あまりそれを重視せずに思考することが重要なのかもしれません。