【感想・評価】多様性の科学

書籍情報|多様性の科学

著者 マシュー・サイド
発行所 ディスカヴァー・トゥエンティワン
楽天ブックス内評価
楽天ブックス内レビュー数

「多様性の科学」のキーワード

黄金の沈黙

支配型ヒエラルキー

尊敬型ヒエラルキー

前提逆転発想法

集団脳

ネットワーク科学

オイスタークラブ

エコーチェンバー現象

フィルターバブル

標準規格化

クローン錯誤

「多様性の科学」の著者「マシュー・サイド」とは?

「多様性の科学」の著者「マシュー・サイド」は、Wikipediaによれば、次のような人物とされています。

※ この記載は、Wikipediaから自動取得しています。正確性については、別途ご確認ください。

感想/書評|多様性の価値の源流とエコーチェンバー現象

近年何かと話題な「多様性」に関する本。

「多様性っていいよね!」

と言うのは簡単だけど、

「なんで?」

と聞かれると困ってしまう人も多いんじゃないでしょうか。

この本は、その疑問に対する2つの回答を提示しているように読めます。

問題解決と多様性

「重要な問題解決にとって多様性が必要だから」

これが、その回答の1つ目です。

本書の著者マシューは、この回答が導かれる理由を、いくつかのデータを示しながら、説明しています。

たとえば、次のデータです。

またコンサルティング会社のマッキンゼー がドイツとイギリスの企業を対象に行った分析では、経営陣の人種および性別の多様性の豊かさが上位4分の1に入っている企業は、下位4分の1の企業に比べて自己資本利益率が66%も高いという結果が出た。

次のようなデータもあるようです。

米コロンビア・ビジネス・スクールのキャサリン・フィリップス教授は、被験者を特定のグループに分け、複数の殺人事件を解決するという課題を与えた。(省略)結果は他人を含めたグループのほうが高い成績を上げた。彼らの正解率は75%。友人ばかりのグループは54%にとどまった。

他にも多くのデータが挙げられているので、気になる方は是非本書を手に取ってみてください。

人間本来の多様性

では、回答の2つ目はなんでしょうか。

「そもそも人間は多様性に富んでいるから」

これが本書が提示する回答の2つ目のようです。

この点についても、本書はいくつかのデータを挙げています。

結果は目を見張るものだった。被験者の中には、アイスクリームを食べて健康的な血糖値を示す人もいれば、すしを食べて乱高下する人もいた。これとはまったく逆の反応を示す人もいた。

これはダイエット方法に関する考察のなかで挙げられたデータです。

食事による血糖値の上昇具合も人によって様々であり、ある人にとっては健康にプラスに働く食事法が、また別の人にとってはマイナスに働くことがあることが示されています。

なお、この2つ目の回答に関しても、他にも多くのデータが挙げられているので、気になる方は是非本書を手に取ってみてください。

多様性の価値の源流

もちろん、多様性の価値は、本書で示されるものには尽きないかもしれません。

しかし、物の見方が異なる人が集まることによって、効果的な意思決定ができるという事実は否定できません。

多様性の価値の源流を考える上で、有意義な本だと思います。

なお、個人的には、本書で紹介されていた

エコーチェンバー現象

というキーワードが気になりました。

ネット社会において、大量の情報が出回る中で、かえって自分の意見と整合的な意見にだけ触れるようになり、偏見が加速されてしまう現象が存在することは、よく知られているところだと思います。

本書は、この現象に関し、単純に自分の意見と整合的な意見にだけ触れるようになったことだけが原因ではなく、自分の意見と整合しない意見に触れながら、それを根拠のないものと断ずるようになることが原因だと考えているようです。

このように、多様な意見に触れながらも、自分の意見と整合的な意見だけを尊重し、他の意見を信用できないものとみなすこと(時には意見に対する反論ではなく、人格攻撃という手段が用いられる)によって偏見が加速される現象をエコーチェンバー現象と呼ぶようです。

エコーチェンバー現象は、カルト集団のように単純に泡の中に閉じ込められて起こるものではない。問題はもっと複雑だ。外部の見解は入ってくるものの、すべて「圧倒的にばかげたもの」として扱われる。そうやって情報が歪められる。すると信頼の形成過程そのものにも歪みが生じる。客観的なデータより、まず誰を信じるかが重んじられる。「何が真実か」はもはや重要ではなくなってしまうのだ。

このキーワードは、現在の社会を解析する上で、重要な着眼点になるように感じました。

感想/書評情報

記録者:DK

記録日:2024年1月24日

読了日:2024年1月

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