【感想・評価】武器になる哲学

書籍情報|武器になる哲学

著者 山口周
発行所 KADOKAWA
楽天ブックス内評価
楽天ブックス内レビュー数

「武器になる哲学」のキーワード

セキュアベース

悪魔の代弁者

他者の顔

マタイ効果

公正世界仮説

洞窟のイドラ

市場のイドラ

劇場のイドラ

プリコラージュ

ソマティック・マーカー仮説

「武器になる哲学」の著者「山口周」とは?

「武器になる哲学」の著者「山口周」は、Wikipediaによれば、次のような人物とされています。

※ この記載は、Wikipediaから自動取得しています。正確性については、別途ご確認ください。

感想/書評|なぜ哲学を学ぶべきか?

現実社会を生きていくために哲学がどう役に立つのかが分かる本です。

概念論に終始する本ではなく、また特定の考え方を押し付けようとする本でもありません。

そのため、初めて哲学に触れようとする方に、とてもオススメです。

哲学を学ぶべき理由

本書冒頭には、哲学を学ぶべき理由がいくつか挙げられています。

次の記述が印象に残ったので、少し長くなりますが、引用させていただきます。

特に実務家と呼ばれる人は、個人の体験を通じて得た狭い知識に基づいて世界像を描くことが多いものです。しかし今日、このような自己流の世界像を抱いた人々によって、様々な問題が起きていることを見逃すことはできません。ジョン・メイナード・ケインズは、著書『雇用・利子・および貨幣の一般理論』において、誤った自己流理論を振りかざして悦に入っている実務家について、次のように記しています。

知的影響から自由なつもりの実務屋は、たいがいどこかの破綻した経営学者の奴隷です。

実に辛辣な指摘です。
これまでに人類が繰り返してきた悲劇を、私たちは今後も繰り返していくことになるのか、あるいはそこで払った高い授業料を生かし、より高い水準の知性を発揮する人類、いわばニュータイプとして生きていけるかどうかは、過去の悲劇をもとにして得られた教訓を、どれだけ学とれるかにかかっていると、私は固く信じています。

数学や物理学と異なり、特に人文科学が対象としている分野のことは、(数式等がないためか)とっつき易く、誰でも語ろうと思えば語り始めることができてしまうものです。

しかし、当然ながら、他の分野と同様に、あらゆるテーマには、多くの先行研究が存在します。

そのような先行研究の内容を認識し、理解した上でなければ、誤った主張や視野の狭い主張をしてしまう可能性があります。

なぜか人文科学の話になった途端、自分の経験だけをベースに話を始めることに違和感を感じなくなる人が少なくないように思います。しかし、それこそ天動説と地動説との関係のように、自分の経験だけを元に議論を展開することには誤謬の恐れがあります(洞窟のイドラ)。

本書を読むと、過去の哲学者による先行研究の存在を知ることができます。一度も哲学に触れたことがない人は、自分の知らないうちに誤った主張や視野の狭い主張をしてしまうのを避けるためにも、本書を手に取ってみるのが良いと思います。

公正世界仮説

本書では多くのキーワードが紹介されていますが、個人的にお気に入りのキーワードは公正世界仮説です。

公正世界仮説の持ち主は、「世の中というのは、頑張っている人は報われるし、そうでない人は罰せられるようにできている」と考えます。このような世界観をもつことで、例えば「頑張っていれば、いずれは報われる」と考え、中長期的な努力が喚起されるのであれば、それはそれで喜ばしいことかも知れません。しかし、実際の世の中はそうなっていないわけですから、このような世界観を頑なに持つことは、むしろ弊害の方が大きい。

…その通りだなと思います。

個人的な感覚ベースですが、公正世界仮説に囚われている人は少なくありません。

本書にも記載のある通り、公正世界仮説に囚われてしまうと、不幸な目に遭った人のことを「そういう目に遭うような原因が本人にもあるのだろう」と考えてしまったり、ある状況(組織や団体など)で努力しても報われない状況が続いたときに、「自己の置かれている状況が道義的に間違っている」と主張し、組織や団体などを無意味に逆恨みすることにもなりかねません。

公正世界仮説に囚われると、その考え方によって人生が破壊されてしまう可能性があることは、もう少し多くの人に認識されても良いと思います。

参考図書の充実

本書では、筆者オススメの参考図書も紹介されています。

本書で哲学に興味をもった人が、さらに知見を深める(先行研究の理解を深める)ために必要な本が数多く紹介されているので、その点も本書のオススメポイントです。

感想/書評情報

記録者:DK

記録日:2024年2月4日

読了日:2024年1月

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