書籍情報|身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質
「身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質」のあらすじ(楽天ブックス)
「身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質」のキーワード
レントシーキング
ラルフ・ネーダー
白銀律
少数決原理
拒否権
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神学大全
エルゴード性
善悪の彼岸
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リンディ効果
ファットテール
少数決の原理
バーベル戦略
対称性
感想/書評|善く生きるために。
反脆弱性の作者であるタレブの本。
あいかわらず、口が悪い。切れ味は抜群。
おばあちゃんや年配者のアドバイスは、9割方、正しいと考えていい。対して、心理学者や行動科学者が書いたものは、1割も正しくない。
タレブらしさが分かる一文。
もっとヤバいのもあったけど、自重します。
倫理学の本
カテゴライズするなら、倫理学の領域に属する本だと思う。
反脆弱性は「どう生きるのが良いのか。」を提案する。
本書は「どう生きるのが善いのか。」も提案する。そんな気がする。
次の記載もある。
みんなに人気のない真実を支持するのは、はるかに大きな善だ。なぜなら、その人の名声がかかっているから。追放されるリスクを冒してまで行動するジャーナリストは、まぎれもなく善人だ。一方、みんなが袋叩きにしてるのを見て、同じことをしても大丈夫だとわかったところで初めて意見を表明し、おまけに善人面をする連中もいる。それは善ではなく悪だ。いじめと臆病を足しあわせたようなものなのだ。
…なんか、最近の日本のニュースに対する批判みたいに見える。
身銭を切れとは
本書でタレブは「身銭を切れ」と主張する。
タレブにとっては、身銭を切って生きることが、善い生き方のようだ。
「リスクを負わずに名声を得よう。」
「リスクを負わずに大金を得よう。」
「なんなら他人にリスクを負わせて稼いじゃおう。」
そんな生き方を否定する。
ときどき、”人類の役に立ちたい”という若者が私のところへやってきて、「そのためにはどうすればいいでしょう?」と訊いてくることがある。彼らは「貧困を減らしたい」「世界を救いたい」といったマクロレベルの立派な夢を持っている。私のアドバイスはこうだ。
(1)決して善をひけらかすな。
(2)決してレントシーキングを行うな。
(3)是が非でもビジネスを始めよ。リスクを冒し、ビジネスを立ち上げろ。
こんなことも言っている。
ちなみにタレブはレントシーキングを忌み嫌っている。
倫理と普遍性
タレブは倫理の普遍性にも言及する。
人間は倫理的で、なおかつ普遍主義者であることは可能か? 理論的には可能だが、残念ながら、現実にはそううまくはいかない。”私たち”という名のクラブが巨大になりすぎると、綻びが生じはじめ、人々が各々の利益をめぐって争いはじめる。
…その通りだわ。
人って、家族とか、一定範囲の共同体のためなら、倫理的に行動しがちだよね。
そして、オストロム以前には、お馴染みのフリードリヒ・ニーチェが同じようなことを述べていた。
「すべての人に同情する」ということはーーわが隣人よ!それは君自身を過酷に扱い、虐待することではないだろうか。
現実的に考えて、倫理的に行動できる対象には限界がある。それは正しい気がする。
そういえば、日本でも有名なマイケル・サンデルが、共同体主義を唱えていた気がする。
共同体主義に近い考え方なんかな。
また調べてみよ。
エルゴード性
タレブは本書で「エルゴード性」なるものを持ち出す。
これも倫理に関係している気がする。
エルゴード性とは、本書の言葉を借りれば、「時間確率とアンサンブル確率が交換可能であること」を意味するみたい。
…これだと意味不明だが、要するに「吸収壁」がない状態のこと。らしい。
状態変化が終了する可能性(=吸収壁)がある場合には、エルゴード性はない。
5分の1で死ぬ可能性のあるロシアンルーレットをやり続けることにはエルゴード性はない。死んだら終わりだから。
タレブは、格差の文脈でも(ピケティを批判しつつ)エルゴード性に触れている。
彼の主張はこんなことを言いたいのかも。
一時的に格差があるのは不平等じゃない。時間によって立場が逆転しうるのであれば。
最後に
本書も反脆弱性も「タレブの主張って、どこかで読んだ話に似てるんだよな〜」と思っていた。
たぶん、サラリーマン金太郎だわ。
…異論は認めます。
感想/書評(2)|身銭、切れてますか?
はじめに断っておこう
この著者、めっちゃ口が悪い
だが、言っている事は非常に論理的で博識で強い信念を持っている
本書は、この不確実性が増した世界でどのように生きていくかの明確な指針を伝えてくれる
その指針とはタイトルにある通り
「身銭を切れ」というものだ
身銭を切るとはつまり、物事のデメリットも引き受けるという事だ
例えば以下のような生き方だ
あなたが誰かにアドバイスをして、その人がアドバイスに従い行動した結果被った不利益の分だけあなたも対価を支払う
否定形の形で言えば
結果に責任を負えないのであれば、アドバイスなんてするな
という行き方だ
なぜ身銭を切る必要があるのか?
それは、その本質が公正、名誉そして犠牲のような人間の実存に関わるからだと筆者は述べている
身銭を切る生き方には憧れるが、身銭を切らない生き方が現代の”世間一般的”には成功の姿とされている
身銭を切る生き方傷つくし怖いが、同時に憧れもある
ある程度のリスクを背負った方がやる気が出ることも知っている
そう思う人も多いはずだ、だからこそ本書がここまで高評価になっているのだと思う
身銭を切るという行き方は、知識として知っていたが自分は実践できていなかったので
こうまでハッキリと言われてドキッとした
それも身銭を切らない生き方の盛大な批判を添えてだ
果たして自分は本当は何を恐れているのか?
そういった事を考えるいいきっかけになった
「X」における感想
タレブの著書名にもあるけど「身銭を切れ」というメッセージは、どれだけ生のリスクリターンに自分を晒してるのか、という問いかけなので
— 有安 伸宏 / Nobuhiro Ariyasu (@ariyasu) September 4, 2022
新たにファンドを立ち上げたVC
新たに起業した連続起業家
などに「個人資産いくら突っ込んだの?」とズケズケと聞くと示唆に富む回答が割とあると思ってる派
タレブの「身銭を切れ」、ブラックスワン以上にこれからの日本人には必読だな。
— AはAである (@_tea_two) April 23, 2023
「身銭を切れ」ナシーム・ニコラス・タレブ 読了。相変わらずのタレブ本で延々皮肉が続いたり比喩や回りくどい表現でつっかかりながら読む。そのなかで突然新しい見方が出てくる。表題の身銭を切れ=リスクを取る意思決定をする以上はペナルティがその意思決定者に降りかかる仕組みもそう。
— 田中中田 (@musyako) July 10, 2020
#2020年上半期の本ベスト約10冊
— 初雪緑茶@新トリ (@AliceRyokutya) July 1, 2020
野家啓一『物語の哲学』
飯田隆編『岩波哲学講座11 』
柄谷行人『日本近代文学の起源』
東浩紀『存在論的、郵便的』
フロム『自由からの逃走』
チャンギージー『ヒトの目、驚異の進化』
タレブ『身銭を切れ』
バルト『明るい部屋』
カミュ『シーシュポスの神話』
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